HTML5でやってくる“ブラウザ中心のスマートフォン市場”におけるiPhoneのポジション


“2012年のスマートフォン市場”的な年末年始の記事等でよく“ブラウザ中心”なんて言葉が出ていました。言葉は前からあるものの、本当にそんな時代がやってくるのでしょうか。言うまでもなく現在は“アプリ中心”なワケで、課金システムやら何やらを含めて、業界全体が大変なコトになるのではないかと想像してしまいますが。
結論からすると自分は少々懐疑的な見方をしています。従来のアプリとHTML5によるWebアプリが共存する、ハイブリッドなユーザー環境ができてくれればなぁ、などと思います。


争点の中心になるのは“HTML5”です。アップル(主に故ジョブズ氏のイメージが強いですが)がFLASHを叩きまくる一方で持ち上げていたアレです。
多様化を増し続けているAndroidスマートフォンにおいては、機種依存しにくいWebアプリが中心になるコトは好ましいコトでしょう。画期的な取り組みになるかも知れません。
現在のChrome Web Storeのように、オンライン前提でネイティブアプリとWebアプリが融合されたような・・・そんな感じでしょうか。


大変だというとiOS陣営のような気がします。今までのiTunesStore、AppStoreで培ったアプリ流通の仕組み(審査のルートなんかも含めて)が何らかの変更を強いられるコトになるでしょう。もしかするとプラットフォームがHTML5になるだけでユーザー側の視点からするとAppStoreの利用もアプリ使用時も何も変わらない、という可能性もありますが。


基本的にHTML5を土台にするのであれば、iOSでもAndroidでも同じアプリが動くことになります(たぶん)。アプリ開発者側からすると大きなメリットです。しかしそこにプラットフォーム毎の課金システムやセキュリティポリシーの違いが絡んできます。


『勝手アプリは流通できるのか?』というのも気になるところです。コレもセキュリティの観点からも大事なポイントです。
“自己責任”の名の下に勝手アプリが流通するのも面白そうですが、ウィルスが流通する大動脈にすらなり得るような気がします。しかもパソコン時代とは違ってスマートフォンには個人情報や決済システムなど大事なものが含まれている可能性が高い上に、基本的に常時ネットに接続されているのです。


・期待とこれから
自分的にはAppleGoogleとMSとかその辺、若しくは外部団体が『安心安全にHTML5でモバイルアプリが流通させられて、ユーザーが迷わない仕組み』なんかを規格化してくれると業界全体が幸せになる気がするのですが。しかしドコにでも自社の都合と利権があるのでそう簡単には共通規格なんてものには落ち着かないでしょう。もちろん競争の概念もあります。
例えばドコモ、au、ソフトバンクがそれぞれのフィーチャーフォン向けに提供しているケータイアプリ(iアプリみたいな)なんかも、同じJAVAでの開発であっても決してそのまま同じものは動かないのです。
期待する一方で不安もあります。仮にモバイルアプリ開発環境の“世界標準規格”なんてモノが出来上がるとアプリの開発プロジェクトがグローバル化し易く、日本のように人件費が高く人口の少ない国では産業が廃れてしまう危険性もあるように思います。アプリ開発ガラパゴス化とでも言いましょうか、ソレはソレで必要とする人達も多くいるんじゃないでしょうか。現在の就活戦線では“モバイルアプリの開発者”というと引く手あまたな状態ですが・・・結論ナシですいません。


iPhoneのポジションは
では極端な話、『iPhoneでもAndroidケータイでもWindowsフォンでも同じアプリが同じ価格で購入できる』なんてコトが実現すれば“iPhoneである必要性”はどこにあるのでしょう。端末メーカーからすると“どこで他社と差別化するか”というコトです。
目に見える範囲では、『端末デザイン、バッテリー、処理性能などの基本性能、タッチパネルの応答性』なんかがあります。確かにアプリが同じものが使えるならば、それを操作するタッチパネルの追従性や応答速度は重要です。少なくとも自分の視点からするとHTC AriaのタッチパネルよりもiPhoneのタッチパネルの方が好みであり大きなアドバンテージです。
例えるならばWindowsPCとMacみたいな感じでしょうか。Macにデザイン力を感じる人もいれば、ソニーVAIOが好きという人もいます。アップルにはアップルのブランドイメージがあり、かつてのソニーに強い憧れを抱く人も多くいます。日本電気が“地デジ対応”を全面に出したPCのCMを流したり、アップルがMacのMagicTouchPadの使用感をアピールしたりと・・・そういう点では、よりオープンなアプリ環境によって、iPhoneはコンピュータにおけるMacのようなポジションとシェアに落ち着くのかも知れません。
それならそれで良いと、自分は思います。実際に自分は現在でもiPhoneAndroidWindowsMacLINUXiPadでWebを通して同じGmailを利用したりしています。ただ、一番操作して快適なiPhoneが一番使用頻度は高いのです。


コンピュータにおけるMacと大きく異なるのは、アップルには今やスマートフォンで一度世界一になった実績があることです。『ウチの家電は東芝派だからケータイも東芝』みたいな強力な囲い込みとブランド力がアップルにはあります。
これまでユーザーにライフスタイルを提案し続けてきたアップルが、そう簡単にシェア争いでズルズル落ちていくとは思えませんし、個人的には思いたくもありません。これからもきっと他社とは明らかに異なる魅力を発揮し続けてくれるものと期待しています。


色々書いていますが、上記には一切“キャリアの都合”は含んでいません。入る余地はあると思うのですが機会があればまた書きたいと思います。
現在端末にインストールして使っているアプリ達はいつかレガシー資産へとなっていく・・・のでしょうか?